内部統制報告書は、企業の財務報告の信頼性を確保するために不可欠な書類です。本記事では、内部統制報告書とは何か、その目的、記載事項、作成・提出の流れ、対象企業について、わかりやすく解説します。
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内部統制報告書とは?基本を理解する
内部統制報告書の定義と目的
内部統制報告書は、企業が財務報告の信頼性を確保するために整備・運用している内部統制の状況を評価し、その結果を報告するものです。この報告書の主な目的は、企業の財務情報の透明性を高め、投資家やその他の利害関係者に対して、企業の内部統制が適切に機能していることを保証することにあります。内部統制の整備状況を評価し、その結果を外部に開示することで、企業は自らの財務報告に対する責任を果たすとともに、市場からの信頼を得ることができます。
内部統制報告書は、企業の規模や業種に関わらず、投資家やステークホルダーに対して透明性の高い情報を提供することを目的としています。報告書を通じて、企業の経営陣は、内部統制の重要性を認識し、継続的な改善に取り組む姿勢を示す必要があります。また、内部統制報告書は、企業の内部統制の有効性を評価する上で重要な情報源となり、投資家やアナリストは、企業の財務リスクを評価し、投資判断を行う際の参考とすることができるのです。内部統制報告書の作成と公開は、企業の信頼性を高め、持続的な成長を支える基盤となります。
内部統制報告書の対象となる企業
内部統制報告書の提出が義務付けられているのは、金融商品取引法に基づいて有価証券報告書を提出する企業です。具体的には、上場企業や一定規模以上の非上場企業が該当します。これは、これらの企業が広く一般の投資家から資金を調達しており、その財務情報の信頼性が社会全体に大きな影響を与えるためです。内部統制報告書を通じて、これらの企業は、自社の財務報告プロセスが適切に管理されていることを示す必要があります。
ツールを導入することで、効率的な内部統制の構築・運用も可能です。こうしたツールは、内部統制のプロセスを自動化し、リスク評価を支援し、内部統制の有効性を監視するための機能を提供します。特に、複数の部門や拠点を持つ企業にとって、これらのツールは内部統制の全体像を把握し、一貫性のある内部統制を維持するために不可欠です。内部統制報告書の作成と提出は、企業の義務であると同時に、企業価値を高める機会でもあります。
内部統制報告書とJ-SOX法(日本版SOX法)の関係
J-SOX法(日本版SOX法)は、企業の財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、その結果を報告することを義務付ける法律で、企業の不正会計や財務報告の虚偽記載を防止することを目的としています。J-SOX法は、企業の経営者に対して、自社の財務報告に係る内部統制の有効性について評価し、その結果を内部統制報告書として開示することを義務付けています。
内部統制報告書の記載事項と作成・提出の流れ
内部統制報告書の主要な記載事項
内部統制報告書には、財務報告に係る内部統制の基本的枠組み、評価の範囲・基準日・評価手続、評価結果、付記事項、特記事項などが記載されます。まず、企業の内部統制の基本的な枠組み、例えば、COSOフレームワーク(内部統制のフレームワークで、世界標準のもの)などの基準に基づいた内部統制の構成要素を記述します。
次に、内部統制の評価範囲、評価の基準日、および評価の手続きについて詳細に説明します。これには、評価対象となる業務プロセス、評価に使用した手法、および評価を実施した担当者などが含まれます。 これらの情報を正確に記載することで、企業の内部統制の状況を適切に伝えることができます。評価結果では、内部統制の有効性に関する結論を明示し、もし重要な不備が存在する場合は、その内容と是正計画を詳細に記述します。付記事項や特記事項では、内部統制の評価結果に影響を与える可能性のある重要な情報、例えば、組織変更やシステム変更などを記載します。内部統制報告書の作成においては、正確性、客観性、および透明性が重要であり、これらの要素を確保することで、報告書の信頼性を高めることができます。
内部統制報告書の作成ステップ
内部統制報告書の作成は、まず評価範囲の決定から始まります。企業の事業活動全体を網羅的に評価するのではなく、財務報告に重要な影響を与える可能性のある業務プロセスを特定し、評価範囲を絞り込むことが一般的です。次に、業務記述書、フローチャート、リスクコントロールマトリックス(RCM)などの内部統制の3点セットを作成し、整備状況を評価します。業務記述書は、各業務プロセスの詳細な手順を文書化したものであり、フローチャートは、業務の流れを図示したものです。リスクコントロールマトリックスは、各業務プロセスにおけるリスクと、それに対応するコントロールを一覧にしたものです。それぞれ、不備があれば是正し、最後に内部統制報告書を作成・提出します。
内部統制の整備状況を評価する際には、これらの3点セットを用いて、業務プロセスが適切に設計され、運用されているかどうかを確認します。もし不備が見つかった場合は、速やかに是正措置を講じ、内部統制の有効性を高める必要があります。内部統制報告書の作成においては、経営者の責任の下、内部監査部門や外部の専門家を活用しながら、客観的かつ公正な評価を行うことが重要です。
内部統制報告書の提出期限と提出先
内部統制報告書の提出期限は、有価証券報告書と同じく、事業年度終了後3ヶ月以内です。これは、企業の財務状況を迅速に開示し、投資家が適切な投資判断を行うための情報を提供するためです。提出期限を遵守することは、企業の信頼性を維持し、法的な問題を回避するために非常に重要です。提出期限に遅延した場合、金融商品取引法に基づく罰則が科される可能性があります。 提出先は、金融庁のEDINET(有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)です。EDINETは、インターネットを通じて有価証券報告書などの開示書類を提出・閲覧できるシステムであり、企業の開示情報を迅速かつ効率的に公開することを目的としています。内部統制報告書は、EDINETを通じて一般に公開され、投資家やその他の利害関係者が自由に閲覧することができます。EDINETの利用にあたっては、事前に利用者登録が必要であり、提出書類は所定のフォーマットに従って作成する必要があります。
内部統制報告制度への対応と監査
内部統制報告制度の目的と特徴
内部統制報告制度は、企業の財務報告の信頼性を高めることを目的としています。これは、企業の財務情報が正確かつ信頼できるものでなければ、投資家やその他の利害関係者が適切な意思決定を行うことができないためです。内部統制報告制度は、企業の経営者に対して、自社の内部統制の有効性について評価し、その結果を外部に開示することを義務付けることで、財務報告の信頼性を高めることを目指しています。 トップダウン型のリスク・アプローチを採用し、内部統制の不備を区分しています。このアプローチでは、まず、企業の経営者が、財務報告に重要な影響を与える可能性のあるリスクを特定し、それらのリスクに対応するための内部統制を構築します。内部統制の不備は、重要性の程度に応じて区分され、重要な不備については、内部統制報告書に詳細に記述する必要があります。また、内部統制監査と財務諸表監査を一体的に実施することが特徴です。これにより、内部統制の有効性と財務諸表の信頼性を同時に評価し、より包括的な視点から企業の財務状況を把握することができます。
内部統制監査の重要性
内部統制監査は、企業の内部統制が有効に機能しているかどうかを評価するものです。これは、企業の経営者が自社の内部統制の有効性を評価するだけでなく、第三者の視点から客観的に評価を受けることで、内部統制の信頼性を高めることを目的としています。内部統制監査は、内部監査人または外部監査人によって実施され、企業の内部統制の設計と運用状況を詳細に検証します。 監査の結果は、内部統制報告書に記載され、投資家やステークホルダーに公開されます。監査の結果、内部統制に重要な不備が見つかった場合は、その内容と是正計画が内部統制報告書に記載され、企業は速やかに是正措置を講じる必要があります。監査法人などの専門家による監査を受けることで、より客観的な評価を得ることができます。
内部統制報告制度に対応しない場合の罰則
内部統制報告制度に対応しない場合、金融商品取引法に基づく罰則が科される可能性があります。これは、内部統制報告制度が、企業の財務報告の信頼性を確保するために重要な役割を果たしており、その遵守が法律によって義務付けられているためです。罰則の内容は、違反の程度や状況によって異なりますが、罰金や懲役などが科される可能性があります。 適切な内部統制を構築・運用し、内部統制報告書を提出することが重要です。
内部統制報告制度への対応は、企業の法的義務であるだけでなく、企業の信頼性を高め、投資家やその他の利害関係者からの信頼を得るためにも重要です。内部統制の構築・運用においては、経営者のリーダーシップが不可欠であり、経営者は、内部統制の重要性を認識し、積極的に取り組む必要があります。また、内部統制の構築・運用には、内部監査部門や外部の専門家を活用することも有効です。
企業の財務報告の信頼性を確保する「内部統制報告書」
内部統制報告書は、企業の財務報告の信頼性を確保するために重要な書類です。この報告書は、企業の内部統制が適切に設計され、有効に運用されていることを示すものであり、投資家やその他の利害関係者にとって、企業の財務情報の信頼性を評価する上で重要な情報源となります。内部統制報告書を作成・提出することは、企業の法的義務であると同時に、企業価値を高める機会でもあります。
本記事で解説した内容を参考に、適切な内部統制を構築・運用し、内部統制報告書を正確に作成・提出してください。内部統制の構築・運用においては、経営者のリーダーシップが不可欠であり、経営者は、内部統制の重要性を認識し、積極的に取り組む必要があります。
企業の財務報告の信頼性を保証する内部統制報告書は、投資家にとって企業価値評価の要となり、これは単なる法的義務に留まらず、企業価値向上の機会とも考えられます。
内部統制報告書の作成においては、さまざまな最新ツールやAIエージェントなどの導入を考えている企業も少なくないかもしれません。最新のツールを活用し、効率化および迅速化の向上に役立つことは重要ですが、何よりも業務プロセスの見える化を行い、適切に業務プロセスを設計した上で、リスクおよびコントロールを定めることが重要となります。
業務プロセスの専門家であるアメリスでは、これまでに業務プロセス整備ならびにリスクコントロールマトリックス(RCM)の見直しをご支援した実績もございます。
適切に構築された業務プロセスに対し、効率的に内部統制報告書を作成・提出することが、企業の信頼性を高め、持続的な成長を支える基盤となるはずです。
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